オーストラリアの映像制作は、いま記録的な規模で動いています。Screen Australia の Drama Report 2024/25 によると、2024/25年度にオーストラリア国内のドラマ制作に投じられた金額は過去最高の27億豪ドル(前年比43%増)。174作品が制作に入り、うち海外資本の長編・配信作品22本に13億豪ドルが投下されています。
その一方で、この分野の学位は「取れば仕事がある」という種類の資格ではありません。国家資格も登録制度もなく、採用の判断材料は作品と現場経験です。だからこそ、どの学校が何を撮らせてくれるかが、そのまま卒業後の差になります。
このページでは、学費の安い順に並べた学校比較、ポートフォリオ選考の有無、卒業生が実際に就く職種、業界が公表している「人が足りない役職」、そして永住の職業リストの実際まで、公式情報をもとに整理します。
DATA ── 映像・映画制作留学の要点
このページの結論 ── 3分でわかる映像・映画制作留学
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映像制作を学べる国は、ほかにもあります。アメリカにもイギリスにもカナダにもあります。そのなかでオーストラリアを選ぶ理由があるとすれば、それは「制作が実際に動いている国だから」です。
Screen Australia が公表した Drama Report 2024/25 によると、2024/25年度にオーストラリア国内のドラマ制作に投じられた金額は過去最高の27億豪ドル、前年比43%増。制作に入った作品は174本で、そのうち海外資本の長編・SVOD(配信)作品22本に13億豪ドルが使われています。ポストプロダクション・デジタル・VFX(PDV)だけでも7億6,200万豪ドル(前年比33%増)です。
この規模を支えているのは、連邦政府の税制優遇です。海外の大型作品がオーストラリアで撮影すると、オーストラリア国内での適格支出に対してLocation Offset が30%還付されます(オーストラリア国内支出1,500万豪ドル超が条件)。撮影地を問わず、ポスプロ・VFXをオーストラリアで行った場合に適用される PDV Offset も30%で、州の制度と合わせると最大15%が上乗せされます。「オーストラリアで撮る/オーストラリアで仕上げる」ことに、制度的な金銭インセンティブがあるということです。
オーストラリアの制作は、全国に均等に散らばっているわけではありません。大型のスタジオ撮影が集まる都市と、ポスプロ・VFXが集まる都市と、ドキュメンタリーや広告が中心の都市があります。学校選びを都市から始める場合は、この違いを先に押さえておくと判断が早くなります。
ただし、「この都市に行けばこの仕事が取れる」と断定できるほど、公開されている地域別の求人統計は細かくありません。ここで確実に言えるのは、Screen Australia の PICA(2026年4月)が、サウンドステージ(撮影スタジオ)の整備と産業用地の確保を全国的な課題として挙げていることまでです。設備の集中は都市によって差がある、という前提で学校を見てください。
この分野は、期待と実際のずれが大きい分野です。学校を選ぶ前に知っておいていただきたいことを、6つに絞ってお伝えします。
AFTRS(Australian Film Television and Radio School)は、公式サイトで「現在、留学生に開いているのは Master of Arts Screen: Business です」と案内しています。Bachelor of Arts Screen: Production は対象外です。
グリフィス大学の Griffith Film School はポートフォリオ入学制度を持っていますが、公式ページに「留学生は国際出願の手続きで出願する必要があります」と明記されています。作品で成績を補う発想は、この学校ではそのまま通りません。
内務省の職業リストで、映像系の職種はひとつもMLTSSLに掲載されていません。189(技術独立ビザ)はMLTSSL掲載が前提のため、この分野では使えません。使えるのは482・186・190・491・494など、雇用主か州が関与するものです。
QILT の追跡調査(2024年)では、クリエイティブアーツ分野のフルタイム就業率は卒業直後で49.6%。ただし同じ人たちを3年後に見ると81.3%に上がります。この分野は、時間をかけて上がる形をしています。
撮影期間だけ契約し、終われば次の現場を探す。これがこの業界の標準的な働き方です。Screen Australia の PICA も「キャリアの進み方が不明瞭で、シニア層との断絶がある」ことを4つの課題のひとつとして挙げています。
入学要件は IELTS 6.0〜6.5で、医療系(7.0)より低い水準です。ただし現場では、専門用語・早口・スラング・無線でのやりとりが同時に来ます。入学できることと、現場で使われることは別の話です。
オーストラリアで映像制作を学ぶルートは、大きく3つに分かれます。どれを選ぶかで、期間も費用も、卒業後に使えるビザも変わります。
2〜4年。大学と、SAE・JMC Academy のような私立の高等教育機関の両方が開講しています。この分野の学士は、講義より制作課題の比重が高いのが特徴です。1年目に基礎(カメラ、照明、録音、編集、脚本)を横断的に触り、2年目以降に専門を絞り、最終学年で卒業制作を作る ── という構成が多く見られます。
大学と私立校の違いは、学費と、学位の使い方に出ます。SAEの学士は年 AUD 27,960 で、大学(35,500〜45,510)より明確に安価です。一方で大学の学位は、のちに大学院に進む場合や、日本の企業に提出する場合に説明がしやすいという面があります。どちらが正しいというより、卒業後にどこで何をするかで選び分けるものです。
VET(職業教育)の課程です。Diploma of Screen and Media(CUA51020)という全国共通の資格があり、TAFEや私立校が開講しています。スウィンバーン工科大学はTAFE部門で Diploma of Screen and Media(Film and Television) を開講しています。
ただし、留学生の受け入れ可否は開講校ごとに違います。同じ資格名でも「留学生に売っている校」と「国内学生専用の校」が混在するのが、オーストラリアのVETの実情です。資格名だけで探すと空振りします。ここは私たちが開講状況を確認します。
1〜2年。すでに学士を持っている方、または実務経験がある方が対象です。AFTRS の Master of Arts Screen: Business(1年・留学生の総額 AUD 64,944・IELTS 7.0)は、制作技術ではなく「スクリーンビジネス」を学ぶ課程で、入学要件は「関連する学士以上、または同等の実務経験・訓練」です。グリフィス大学にも Master of Screen Production があります。
学費の安い順に並べています。すべて留学生向けの定価(奨学金の適用前)です。
| 学校 | 課程 | 年数 | 都市 | 年額(定価) | IELTS |
|---|---|---|---|---|---|
| SAE 最安 | Bachelor of Film | 2〜3年 | シドニー/メルボルン/ブリスベン/アデレード/パース | AUD 27,960 | 6.0(各5.5) |
| フリンダース大学 | Bachelor of Film and Television (Screen Production) | 3年 | アデレード | AUD 35,500 | 6.0(S・W 6.0) |
| グリフィス大学 | Bachelor of Film and Screen Media Production | 3年 | ブリスベン(South Bank) | AUD 37,500 | 6.5 |
| QUT | Bachelor of Creative Arts (Film and Screen) | 3年 | ブリスベン(Kelvin Grove) | AUD 39,800 | 6.5(各6.0) |
| スウィンバーン工科大学 | Bachelor of Film and Television (Honours) | 4年 | メルボルン(Hawthorn) | AUD 45,510 | 6.0(各6.0) |
| シドニー工科大学(UTS) | Bachelor of Creative Production in Media Arts | 3年 | シドニー(City) | 未掲載 | 6.5(W 6.0) |
| カーティン大学 | Bachelor of Creative Arts(Screen Arts専攻) | 3年 | パース | 未掲載 | 6.5(各6.0) |
| ボンド大学 | Bachelor of Film and Television | 2年(留学生専用の3年版あり) | ゴールドコースト | 科目単位 | 要確認 |
| AFTRS | Master of Arts Screen: Business ※学士は留学生対象外 |
1年 | シドニー | AUD 64,944(総額) | 7.0 |
Bachelor of Film and Screen Media Production(3年・CRICOS 058710B)。キャンパスはブリスベンのSouth Bank ── クイーンズランド州立美術館やQPAC(舞台芸術センター)が並ぶ文化地区にあります。2026年入学の留学生向け年額は AUD 37,500、英語要件は IELTS 6.5です。
大学の公式キャリアページは、この学位の進路として映画・テレビのプロデューサー、映像編集、監督、プロダクションマネージャー、ラインプロデューサー、モーショングラフィックスデザイナー、ポストプロダクション専門職、VFXアーティスト、録音・サウンドデザイン、ライブイベントプロデューサー、脚本監修などを挙げています。
注意点がひとつあります。Griffith Film School はポートフォリオ入学の制度を持っていますが、公式ページに「留学生は国際出願の手続きで出願する必要があります」と明記されており、留学生はこの制度を使えません。成績要件で判断されることになります。
3年・CRICOS 119234E。Bedford Park キャンパスでの対面授業です。年額 AUD 35,500、英語要件は IELTS 総合6.0(Speaking・Writing 各6.0)と、大学のなかでは低めの設定です。
この大学の特徴は、入学選考と機材の2点に出ています。入学要件としてポートフォリオ・CV・面接・志望理由書を課しており、すでに作品がある方にとっては有利に働く入口です。機材面では、公式にARRI Alexa 35での長編撮影と、最終課題での16mmフィルム撮影を挙げています。デジタルだけでなくフィルムを実際に回す課程は、多くありません。
産業連携としては、ARRI CFS、Adelaide Film Festival、CDW Studios などとの提携が公式に挙げられています。
3年・CRICOS 116102H。Kelvin Grove キャンパス。2026年の留学生向け年額は AUD 39,800(フルタイム96単位)、英語要件は IELTS 総合6.5(各項目6.0以上)です。
この課程の公式ページは、卒業生の実績を具体的に挙げています。「卒業生が制作に関わった作品は、アカデミー賞・エミー賞・BAFTA・AACTA・IFアワードを受賞している」としたうえで、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『レヴェナント: 蘇えりし者』『ハクソー・リッジ』『ドクター・ストレンジ』、テレビシリーズでは『TRUE DETECTIVE』『ウエストワールド』『ナイト・マネジャー』などを挙げています。
ここは冷静に読んでください。これは「卒業生の誰かがその作品のスタッフとして参加した」という意味であり、入学すれば同じ機会が得られるという意味ではありません。ただし「その業界と実際につながっている学校である」ことの根拠にはなります。
4年・CRICOS 092513B。Hawthorn キャンパス。2026年の留学生向け年額は AUD 45,510、英語要件は IELTS 総合6.0(各項目6.0以上)です。
4年制のHonours(優等学位)である点が、他校との最大の違いです。3年の学士に1年を足した形ではなく、最初から4年課程として設計されています。大学はWork Integrated Learning(産業連携型の学習)を全学士で保証しており、最終学年には Major Project: Production と Major Project: Post-Production and Distribution という2つの卒業制作科目が置かれています。制作だけでなく「仕上げて配給まで持っていく」ところまでを科目にしている点が特徴です。
学費は本ページの比較のなかで最も高く、4年で AUD 182,040になります。ただしスウィンバーンは出願すると自動的に最大20%の国際奨学金の審査対象になる(別途申請不要)としています。この課程が対象かどうかは、出願前に確認が必要です。
2〜3年。SAE はシドニー・メルボルン・ブリスベン・アデレード・パースの5都市にキャンパスを持つ高等教育機関です。年額 AUD 27,960(1.0 EFTSL)で、本ページの比較のなかで最も安価です。英語要件は IELTS 総合6.0(各項目5.5以上・2年以内に受験したもの)。
学期の組み方が柔軟です。6学期(約2年・ファストトラック/CRICOS 080193A)、8学期(約2.5年/062747K)、9学期(3年/102341H)から選べます。ただし短縮すると1年あたりの学費負担は上がり、学位全体の総額は変わりません。また卒業生ビザ(485)の「2学年相当」の要件との関係があるため、短縮は慎重に判断すべきところです。
公式が挙げる進路は映像編集、プロデューサー、撮影監督、カラリスト、監督、脚本、プロダクションデザイナー、カメラアシスタントです。入学要件は18歳以上と、オーストラリアの高校12年生相当の英語の修了とされています。
ゴールドコーストの私立大学。Bond は年3学期制のため、Bachelor of Film and Television(HS-20021・CRICOS 063066E)を6学期=2年で修了できます。これとは別に留学生専用の3年版(HS-20037・CRICOS 077410A)があり、こちらは公式ページに「留学生のみ対象」と記載されています。
カリキュラムは24科目で構成され、プロデュース、脚本、監督、撮影、編集、サウンドデザインを横断します。大学は「卒業時に厚いポートフォリオを持って出ること」を課程の目的として挙げており、学生作品を国際映画祭に出品してきた実績にも触れています。
学費は科目単位の課金方式で、履修する科目によって学期ごとの金額が変わります。公式ページ上の計算ツールで確認する必要があり、本ページでは推測での金額記載はしていません。ゴールドコーストは大型の撮影スタジオが立地する地域でもあります。
AFTRS はオーストラリアの国立映画学校です。そして留学生に開かれているのは、この修士課程だけです(CRICOS Provider Code 03662D)。Bachelor of Arts Screen: Production は留学生の対象外である旨が公式に案内されています。
1年(フルタイム)。留学生の総額は AUD 64,944。英語要件はIELTS Academic 総合7.0と、この分野では突出して高い水準です。入学要件は「関連分野の学士以上、または同等の実務経験・訓練」。オンラインと対面の両方の履修形態があり、1学期あたり1〜4科目を選べる設計です。
内容は制作技術ではなく「スクリーンビジネス」です。公式は修了生の進路として Jungle Entertainment、Screen Australia、SBS On Demand、Madman Entertainment などを挙げています。カメラを回す仕事ではなく、企画・資金調達・配給・権利といった側から業界に入りたい方の課程だと理解してください。
授業料だけを、学位全体で計算します。すべて定価(奨学金の適用前)です。
| 学校 | 年額 × 年数 | 授業料の総額 |
|---|---|---|
| SAE | 27,960 × 3.0 EFTSL | AUD 83,880 |
| フリンダース大学 | 35,500 × 3年 | AUD 106,500 |
| グリフィス大学 | 37,500 × 3年 | AUD 112,500 |
| QUT | 39,800 × 3年 | AUD 119,400 |
| スウィンバーン工科大学 | 45,510 × 4年 | AUD 182,040 |
| AFTRS(修士) | 1年 | AUD 64,944 |
最も安いSAE(83,880)と、最も高いスウィンバーン(182,040)の差は AUD 98,160 ── およそ2.2倍です。1豪ドル100円換算で、SAEが約839万円、スウィンバーンが約1,820万円にあたります。
大学だけで比べると、差はもう少し小さくなります。フリンダース大学の106,500からQUTの119,400までは AUD 12,900 の差 ── 年あたり約4,300豪ドルです。この程度の差なら、学費より「その学校で何が撮れるか」で選んだほうが、結果としての費用対効果は高くなります。
この分野に特化した奨学金は多くありません。現実的に効くのは、大学が全学的に出している「留学生向けの授業料減額」です。
グリフィス大学は、2026年・2027年に開始する留学生に対して授業料20%の減額を提供しています。別途の申請は不要で、学業成績が基準を満たす出願者が自動的に審査されます。対象は学部および大学院コースワークです。
仮に適用されれば、Bachelor of Film and Screen Media Production は年 37,500 → 30,000、3年で 112,500 → 90,000になります。AUD 22,500 の差です。
スウィンバーン工科大学は、コースに出願すると自動的に最大20%の国際奨学金の審査対象になり、別途の申請は不要としています。4年で AUD 182,040 という金額を考えると、20%は約36,000豪ドルにあたります。この分野で最も効く1項目です。
ここでも、Bachelor of Film and Television (Honours) が対象コースかどうかは確認が必要です。Honours課程や特定学部が対象外になっている大学は珍しくありません。
この分野の英語要件は、医療系や教員系と比べると低い水準です。AHPRA登録が絡む看護・歯科(IELTS 7.0)、教員登録が絡む教育(Speaking・Listening 8.0)のような二重の壁がありません。
| 学校 | IELTS(Academic) | 備考 |
|---|---|---|
| SAE | 総合 6.0(各項目5.5以上) | 2年以内に受験したもの |
| スウィンバーン工科大学 | 総合 6.0(各項目6.0以上) | 各項目に下限があります |
| フリンダース大学 | 総合 6.0(Speaking・Writing 6.0) | ポートフォリオ・面接あり |
| グリフィス大学 | 総合 6.5 | ─ |
| QUT | 総合 6.5(各項目6.0以上) | ─ |
| シドニー工科大学(UTS) | 総合 6.5(Writing 6.0) | ─ |
| カーティン大学 | 総合 6.5(各項目6.0以上) | ─ |
| AFTRS(修士) | 総合 7.0 | この分野で最も高い水準 |
ここは率直にお伝えします。IELTS 6.0で入学できたとしても、撮影現場の英語はまったく別の負荷がかかります。
理由は3つあります。ひとつ、専門用語が大量に飛び交います(gaffer、grip、best boy、C-stand、apple box、martini shot ── 辞書に載っていない、あるいは載っていても意味が違う語が並びます)。ふたつ、速度が速い。撮影は時間との勝負なので、丁寧に言い直してくれる場面は多くありません。みっつ、無線とざわめきのなかで聞き取ることになります。
対策として現実的なのは、入学前に「観る量」を増やしておくことです。字幕なしで英語の映画・ドラマ・メイキング映像を大量に浴びておくと、入学後の立ち上がりが変わります。加えて、YouTubeにある英語の撮影解説チャンネルは、専門用語を耳から入れるのに向いています。
この分野の選考は、学校によってまったく違います。「作品を見せられる学校」と「成績だけで判断される学校」に分かれます。
フリンダース大学は Bachelor of Film and Television (Screen Production) の入学要件として、ポートフォリオ・CV・面接・志望理由書を挙げています。すでに撮っているものがある方には有利な入口です。
Griffith Film School のポートフォリオ入学はアニメーション・映画・ゲームの3課程が対象ですが、公式ページに「留学生は国際出願の手続きで出願する必要があります」と明記されています。留学生は成績要件で判断されます。
QUTの Bachelor of Creative Arts (Film and Screen) は選考ランク70.00が公式の目安です。ポートフォリオの提出は必須要件として記載されていません。
AFTRS の Master of Arts Screen: Business は、入学要件を「関連分野の学士以上、または同等の実務経験・訓練」としています。学位がなくても、実務で入れる可能性がある設計です。
参考として、グリフィス大学が国内学生向けに公表しているポートフォリオの要件を挙げます。同校は「分析」と「制作」の2つを求めており、分析は「映画・テレビ番組・オンラインコンテンツを300語以内で論評する(または2分の音声・映像で提出する)」、制作は「独創性と技術力を示す既存または新規の作品」としています。
この構成は、他校のポートフォリオを準備するうえでも参考になります。つまり求められているのは、「作れること」だけでなく「なぜそう作るかを説明できること」です。作品を並べるだけでは足りません。
この分野の学校選びで、資料請求だけでは分かりにくいのが設備です。そして設備は、卒業制作の質にそのまま出ます。
公式に機材を明示している例として、フリンダース大学があります。同大学はARRI Alexa 35(現在のデジタルシネマカメラの標準機のひとつ)での長編撮影と、最終課題での16mmフィルム撮影を公式ページに挙げています。フィルムを実際に回させる課程は、いま多くありません。
スウィンバーン工科大学は機材名ではなく科目構成で示しています。最終学年に Major Project: Production と Major Project: Post-Production and Distribution を置き、「撮る」だけでなく「仕上げて出す」までを単位にしているのが特徴です。
ここが、この分野でいちばん誤解されやすい部分です。「映画を学ぶ=映画監督になる」と考えて進路を組むと、ほぼ確実に行き詰まります。実際の進路は、もっと広く、もっと分業的です。
グリフィス大学のキャリアサービスが、この学位の進路として公式に挙げている職種は次のとおりです。
| 分類 | 公式に挙げられている職種 |
|---|---|
| 制作・演出 | 映画・テレビプロデューサー/映画監督/プロダクションマネージャー/プロダクションスーパーバイザー・ラインプロデューサー/脚本監修(story consultant / script supervisor) |
| 撮影・技術 | 録音・サウンドデザイン(sound recordist / designer) |
| ポストプロダクション | 映像編集(film and video editor)/ポストプロダクション専門職/モーショングラフィックスデザイナー/モーショングラフィックスアーティスト/VFXアーティスト |
| 制作以外 | フリーランスのコンテンツプロデューサー/コンテンツクリエイター/ライブイベントプロデューサー/映画パブリシスト/メディア・コミュニケーション研修担当 |
働く場としては、映像制作、VFX制作、クリエイティブメディア制作、マーケティング・広告、映画祭・芸術祭、デジタルコンテンツ制作、ライブイベント制作、ウェブ・インタラクティブメディアが挙げられています。
SAEが公式に挙げている進路も並べておきます。映像編集、プロデューサー、撮影監督(cinematographer)、カラリスト、監督、脚本、プロダクションデザイナー、カメラアシスタント。スウィンバーン工科大学は脚本家、監督、撮影監督、編集、プロデューサー、ポストプロダクションマネージャー、UTSは監督、プロデューサー、脚本家、撮影監督、編集、ポストプロダクション専門職を挙げています。
上のリストは「最終的にたどり着く職種」であって、卒業直後の職種ではありません。この業界には明確な下積みの構造があり、ほとんどの人が最下層のポジションから入ります。
| 部門 | 入口(卒業直後) | 数年後 | その先 |
|---|---|---|---|
| 撮影部 | Camera Trainee / 2nd AC(クラッパー・機材管理) | 1st AC(フォーカスプラー)/Camera Operator | Director of Photography(撮影監督) |
| 制作部 | Runner / Production Assistant | Production Coordinator/Production Secretary | Production Manager/Line Producer/Producer |
| 編集・ポスプロ | Assistant Editor(素材整理・同期・書き出し) | Editor(短編・CM・配信番組) | Editor(長編)/Colourist/VFX Editor |
| 録音部 | Sound Assistant / Boom Operator | Sound Recordist | Sound Designer/Re-recording Mixer |
| 照明・グリップ | Lighting Assistant / Grip Assistant | Best Boy/Gaffer(照明技師) | Chief Lighting Technician |
| 美術部 | Art Department Assistant | Set Dresser/Props Master | Art Director/Production Designer |
| 演出部 | 3rd AD(サードアシスタントディレクター) | 2nd AD/1st AD | Director(監督) |
ここは、この分野で最も実用的な情報です。Screen Australia が2026年4月8日に公表した PICA(Production Infrastructure and Capacity Analysis)は、業界の人材の逼迫が大きい役職を分野別に特定しています。
| 分野 | 人材の逼迫が大きいとされた役職(上位5つ) |
|---|---|
| 実写制作 | ラインプロデューサー/ロケーションマネージャー/制作会計(Production Accountant)/プロダクションコーディネーター/プロダクションマネージャー |
| PDV・アニメーション | VFXスーパーバイザー/テクニカルディレクター/編集(Editor)/アートディレクター/VFXエディター |
この一覧を見て、気づいていただきたいことがあります。
ひとつ。「監督」も「撮影監督」も入っていません。不足しているのは制作を回す役職と、仕上げの技術職です。「映画を作る仕事」としてイメージされやすい役職ほど、実は人が余っています。
ふたつ。制作部の役職(ラインプロデューサー、ロケーションマネージャー、制作会計、コーディネーター、マネージャー)が上位を占めています。これらは撮影技術ではなく、予算・スケジュール・交渉・書類の仕事です。映像の学位を持ちながら、数字と段取りが得意な人は、この業界では希少な存在になります。
みっつ。PDV側では「編集」と「テクニカルディレクター」が挙がっています。オーストラリアのPDV支出は前年比33%増(7億6,200万豪ドル)で伸びており、ポストプロダクションは制作の波に比べて需要が安定しやすい領域です。
ここは率直に書きます。QILT(豪州政府の高等教育調査)の Graduate Outcomes Survey – Longitudinal(2024年)によると、クリエイティブアーツ分野の卒業生のフルタイム就業率は、卒業直後(2021年)で49.6%でした。約半数です。
ただし、同じ調査は続きも示しています。同じ人たちを3年後(2024年)に追跡すると、フルタイム就業率は81.3%まで上がっています。31.7ポイントの上昇です。
この点は、意外と語られません。映像制作の学位で身につくのは「映像で何かを伝える技術」であって、その使い道は映画とテレビだけではありません。
グリフィス大学が挙げている進路にも、マーケティング・広告、デジタルコンテンツ制作、ライブイベント制作、ウェブ・インタラクティブメディア、企業研修が含まれています。いま最も本数が多く、最も安定して発注があるのは、実は企業のコンテンツ制作とSNS向けの映像です。
これは「妥協」ではありません。企業案件で生活を支えながら自分の作品を作る、というのはこの業界では非常に一般的な働き方です。むしろ「映画一本で食べる」ことを最初から前提にするほうが、この業界では例外的な選択です。
この分野の求人は、公開されないものが多いのが実情です。グリフィス大学のキャリアページも「多くの仕事の機会は公募されないため、こちらから雇用主にアプローチし、相手のニーズと自分のスキル・経験・関心・資格がどう合うかを調べることをお勧めします」と書いています。大学自身が「公募を待つな」と言っているわけです。
実務的には、次の経路が中心になります。
これが最も強い経路です。学生のうちにランナーやPAとして現場に入り、そこで顔を覚えられる。次の作品に呼ばれる。この分野の就職活動は、卒業後ではなく在学中に始まっています。
州ごとの screen agency(Screen Queensland、Screen NSW など)がクルーのデータベースや求人情報を持っています。学生のうちから登録できるものもあります。
産業連携(WIL)を持つ課程では、学校が現場を紹介する仕組みがあります。スウィンバーン工科大学は全学士でWILを保証しています。
作った短編が映画祭で流れる、SNSで見られる。そこから声がかかる。時間はかかりますが、この経路で入る人も確実にいます。
この分野のご相談で、私たちが最初にお聞きするのは「卒業後、どこで働くつもりですか」です。オーストラリアに残りたいのか、日本に帰るのか。それによって選ぶべき学校も、在学中にやるべきことも変わります。
オーストラリアに残るなら、在学中の人脈がすべてです。制作が動いている都市を選び、在学中から現場に入る前提で設計します。日本に帰るなら、作品の質が優先です。設備が良く、卒業制作にしっかり時間をかけられる学校のほうが向いています。
そしてもうひとつ、率直にお伝えしていることがあります。この分野は、卒業直後が最もつらい時期です。約半数がフルタイムの職に就けていない、という数字が出ています。ただし3年後には8割を超えます。だからこそ、「最初の2年をどう食いつなぐか」まで含めて計画を立てておくことが、この分野では特に重要です。ここも一緒に考えます。
学校を選ぶ前に、その先にある業界の輪郭を把握しておく価値があります。
| 指標 | 数値 | 出典・年度 |
|---|---|---|
| ドラマ制作費(総額) | 27億豪ドル(前年比 +43%) | Screen Australia/2024/25年度 |
| 制作に入った作品数 | 174本 | 同上 |
| うちオーストラリア作品 | 71本・11億豪ドル(+14%) | 同上 |
| うち海外資本の作品 | 22本・13億豪ドル | 同上 |
| PDV(ポスプロ・VFX)支出 | 7億6,200万豪ドル(+33%) | 同上 |
| Location Offset(撮影誘致) | 30%(豪州内支出1,500万豪ドル超) | 連邦政府 |
| PDV Offset(ポスプロ誘致) | 30%(州の制度と合わせ最大+15%) | 同上 |
| 映像・音響分野の就業者数 | 42,466人 | Screen Australia(2021年国勢調査) |
この表から読み取れることを、3つに整理します。
ひとつ。制作規模は過去最高ですが、その伸びの大半は海外資本です。27億豪ドルのうち13億が海外作品で、前年からの増加分678百万豪ドルも国際制作の伸びによるものです。Screen Producers Australia(業界団体)は、この構造について「オーストラリア独自の作品の本数は減り続けている」と警鐘を鳴らしています。つまり「仕事はあるが、それは主に海外作品のクルーとしての仕事である」という構図です。
ふたつ。ポストプロダクションの伸びが目立ちます。PDV支出は前年比33%増。ポスプロ・VFXは、撮影と違って「その国で撮る必要がない」ため、制度が有利なかぎり継続的に仕事が来やすい領域です。
みっつ。就業者数の水準は、絶対数としては大きくありません。2021年国勢調査で映像・音響分野の就業者は42,466人。看護(数十万人規模)などと比べると、市場の規模そのものが違います。「求人の絶対数が多い分野ではない」という前提で見てください。
この分野は、永住の設計が難しい分野です。事実をそのままお伝えします。
内務省の職業リスト検索で確認したところ、映像系の職種は、ひとつもMLTSSL(Medium and Long-term Strategic Skills List)に掲載されていません。189(Skilled Independent/技術独立ビザ)はMLTSSL掲載が前提のため、この分野では使えないということになります。
| 職種(ANZSCO) | 掲載リスト | 使えるビザ |
|---|---|---|
| Video Producer(212318) | STSOL + CSOL | 482(Core Skills)・186(Direct Entry)・190・491・494・489・407 |
| Program Director, Television or Radio(212315) | STSOL + CSOL | 482・186・190・491・494・489・407 |
| Technical Director(212317) | STSOL + CSOL | 482・186・190・491・494・489・407 |
| Stage Manager(212316) | STSOL + CSOL | 482・186・190・491・494・489・407 |
| Sound Technician(399516) | STSOL + CSOL | 482・186・190・491・494・489・407 |
| Director, Film/TV/Radio/Stage(212312) | STSOL のみ | 190・491・494・489・407(482・186は不可) |
| Film and Video Editor(212314) | STSOL のみ | 190・491・494・489・407(482・186は不可) |
| Director of Photography(212313) | ROL のみ | 494のみ |
| Art Director, Film/TV/Stage(212311) | ROL のみ | 494のみ |
| Media Producer (excluding Video)(212112) | ROL のみ | 494のみ |
この表は、この分野の永住設計の急所です。3点だけ押さえてください。
ひとつ。「編集者」と「ビデオプロデューサー」でルートが分かれます。Film and Video Editor(212314)はCSOLに載っておらず、雇用主スポンサーの482も、その先の186(Direct Entry)も使えません。一方 Video Producer(212318)はCSOLに掲載されており、482→186のルートが開いています。肩書きひとつで制度上の扱いが変わる、ということです。
ふたつ。撮影監督とアートディレクターは、最も狭い扱いです。Director of Photography(212313)と Art Director(212311)はROL(Regional Occupation List)のみで、使えるのは494(地方部の雇用主スポンサー)だけです。「撮影監督として永住する」という設計は、制度上きわめて限定的だとご理解ください。
みっつ。業界が不足しているとした職種と、ビザで使える職種が一致していません。PICAが人材逼迫を指摘したアートディレクターはROLのみ、編集(Film and Video Editor)はCSOL未掲載。一方でCSOLに載っているテクニカルディレクターは、PICAでも不足職種に挙がっています。この重なりは、狙いどころとして意味があります。
2〜4年の学位
卒業生ビザで就労
CSOL掲載職種で
雇用主スポンサー
永住
学位を修了
州内で就労実績
VETASSESS
州の指名
IELTS 6.0〜6.5
2〜4年
ポートフォリオ完成
現場で実務
ポートフォリオ化
作品を見る大学へ
志望理由書
3年
職務内容を英文化
1〜2年
現地で実務
CSOL掲載職種で
英語を上げる
Screen and Media
単位認定を受ける
オーストラリアで学んだ映像制作を、日本でどう使うか。この分野には国家資格がないため、「資格を持ち帰る」という発想は成立しません。持ち帰るのは、作品と技術と、英語です。
映像は言語に依存しない部分が大きいため、オーストラリアで撮った作品は日本の選考でもそのまま見せられます。むしろ「海外で、英語の現場で、外国人チームと作った」という事実が、日本の制作会社では差別化になります。
日本の広告・映像業界には、海外の撮影クルーとやりとりする案件、海外向けのコンテンツ、インバウンド関連の映像が一定量あります。「映像の技術」と「実務レベルの英語」を両方持っている人は多くありません。ここは実際に効く組み合わせです。
ここは率直にお伝えします。職名、進行の作法、書類の形式、労働時間の考え方 ── 日本とオーストラリアで違う部分は少なくありません。「海外で学んだからそのまま即戦力」とはいかない場面があります。技術と作品は通用しますが、現場のやり方は現地で覚え直すものだと考えておいてください。
これが最重要です。「撮影実習があります」ではなく、「監督またはキーポジションとして何本撮れるか」を数字で聞いてください。卒業時のポートフォリオの厚みは、ここで決まります。
公式に機材名を挙げている学校は多くありません。フリンダース大学はARRI Alexa 35と16mmフィルムを明記しています。「何があるか」だけでなく「何台を何人で使うか」を確認してください。
この分野は在学中の現場アルバイトが最大の就職経路です。撮影が行われている都市にいることは、それ自体が有利に働きます。学費だけで都市を決めないでください。
スウィンバーン工科大学はWork Integrated Learning を全学士で保証しています。「機会があります」と「単位として保証されています」は別です。ここは書面で確認する価値があります。
短縮コースは魅力的ですが、卒業生ビザ(485)は「2学年相当の就学」が前提です。「早く終わる」ことと「卒業後に働ける」ことは、両立しない場合があります。ここは出願前に確定させてください。
アンアルウェンの強みは、留学の申し込みだけで終わらない、出発前から進学後まで続く伴走型サポートです。
「手続きだけを代行するエージェント」ではなく、「留学という大きな挑戦を一緒に考え、現地でも支え続けるパートナー」であること。それが、私たちが他の留学エージェントに負けない一番の強みです。
学校選びや出願手続きはもちろん、進学で重要となるGS(Genuine Student)対策、学生ビザ申請もしっかりサポート。この分野は「なぜ映像なのか」「卒業後にどうするのか」を説明する力が問われます。ここに時間をかけます。
オーストラリアには提携オフィスがあり、渡航後も学校生活や現地での手続き、困りごとを日本と現地の両方からサポートします。卒業制作の時期の相談や、卒業生ビザ(485)の準備についてもご相談いただけます。
一人ひとりに十分な時間をかけるため、サポート人数を毎月12名様限定としています。映像は「何を作りたいか」で選ぶべき学校が変わる分野です。画一的な案内ではなく、その方の状況に合わせて設計します。
紹介先を幅広く並べるだけではなく、スタッフが実際に学校へ足を運び、授業や校内の雰囲気を確認したうえで、厳選した学校を紹介しています。この分野は、設備と制作環境が資料だけでは分かりません。
2008年の設立以来、3,000名以上の留学を支えてきた経験と、オーストラリア留学に特化した専門知識を生かしてご提案します。
費用や生活面の現実も率直にお伝えします。「AFTRSの学士は留学生を受け入れていません」「グリフィスのポートフォリオ入学は留学生には使えません」「この分野は189が使えません」──言いにくいことも含めてお伝えするのが、私たちの仕事だと考えています。
アンアルウェンは、オーストラリア留学の専門エージェントです。学校選びから渡航後のトラブル対応まで、すべて無料でサポートします。学校へ直接申し込む場合と比べて、余分な費用は一切かかりません。
未経験でも入学できますか?
できます。多くの課程は、経験を入学要件にしていません。SAEは「18歳以上、オーストラリアの高校12年生相当の英語の修了」、QUTは選考ランク70.00、グリフィス大学は成績要件のみ(留学生はポートフォリオ入学を使えないため)です。
例外は フリンダース大学です。この大学はポートフォリオ・CV・面接・志望理由書を入学要件としています。未経験の場合は、この大学が最も準備を要することになります。
ただし「入学できること」と「入ってからついていけること」は別です。1年目からカメラを持たされ、グループで作品を作ることになります。渡航前にスマートフォンでも構わないので、短いものを何本か作っておくことを強くお勧めします。これは入学のためではなく、入学後のためです。
いくらかかりますか?
授業料(定価)で計算します。
最も安いルート:SAE 年 AUD 27,960 × 3.0 EFTSL =AUD 83,880(1豪ドル100円換算で約839万円)。
大学のルート:フリンダース大学 35,500×3=106,500/グリフィス大学 37,500×3=112,500/QUT 39,800×3=119,400。
最も高いルート:スウィンバーン工科大学 45,510×4年=AUD 182,040(約1,820万円)。
最安と最高の差は AUD 98,160、およそ2.2倍です。
これに生活費、OSHC、学生ビザ申請料と、この分野に特有の実費(編集用PC、ストレージ、ソフトのライセンス、制作課題のロケ費・小道具・キャストへの謝礼、映画祭の出品料)が加わります。制作費は課題の内容と本人の作り方で大きく変わるため、目安額は出していません。学生ビザ申請料と財政要件の金額は改定が続いているため、出願時点で内務省の最新情報をご確認ください。
AFTRS(国立の映画学校)に行きたいのですが。
学士課程は、留学生を受け入れていません。AFTRSは公式サイトで「現在、留学生に開いているのは Master of Arts Screen: Business です」と案内しており、Bachelor of Arts Screen: Production は対象外です。
留学生が出願できる Master of Arts Screen: Business は1年課程で、総額 AUD 64,944、英語要件は IELTS Academic 総合7.0。入学要件は「関連分野の学士以上、または同等の実務経験・訓練」です。
そして内容にご注意ください。この課程は制作技術ではなく「スクリーンビジネス」── 企画、資金調達、配給、権利といった経営側の領域を扱います。修了生の進路として Jungle Entertainment、Screen Australia、SBS On Demand、Madman Entertainment などが挙げられています。
「カメラを回したい」という目的でAFTRSを目指しているのであれば、この課程は目的と合いません。その場合は グリフィス大学、フリンダース大学、スウィンバーン工科大学、QUT といった大学の学士が現実的な選択肢です。
ポートフォリオ(作品集)は必要ですか?
学校によります。必須のところと、不要なところがあります。
必要:フリンダース大学はポートフォリオ・CV・面接・志望理由書を入学要件に明記しています。
不要(というより使えない):グリフィス大学のポートフォリオ入学制度は、公式ページに「留学生は国際出願の手続きで出願する必要があります」と記載されており、留学生はこの制度を使えません。成績要件で判断されます。
参考:グリフィス大学が国内学生向けに示しているポートフォリオの要件は、「分析」(映画・番組・オンラインコンテンツを300語以内で論評、または2分の音声・映像)と「制作」(独創性と技術力を示す作品)の2部構成です。作品を並べるだけでなく、なぜそう作るかを説明できることが求められていると読めます。他校のポートフォリオを準備する際にも、この構成は参考になります。
入学に不要な場合でも、作品は作っておく価値があります。就職活動の実体が「作品を見せること」である以上、早く始めた人が有利です。
卒業後、オーストラリアで映像の仕事に就けますか?
可能性はあります。ただし「就職活動をすれば決まる」種類の分野ではありません。
数字からお伝えします。QILTの追跡調査(2024年)によると、クリエイティブアーツ分野の卒業生のフルタイム就業率は、卒業直後で49.6%。約半数です。ただし同じ人たちを3年後に見ると81.3%まで上がります。この分野は「卒業直後が谷で、そこから上がる」形をしています。
実務的に効くのは、在学中の現場アルバイトです。グリフィス大学のキャリアページ自身が「多くの仕事の機会は公募されないため、こちらから雇用主にアプローチすることをお勧めします」と書いています。この分野の就職活動は、卒業後ではなく在学中に始まっています。
そして、需要のある役職は「監督」ではありません。Screen Australia のPICA(2026年4月)が人材の逼迫を指摘したのは、実写制作ではラインプロデューサー、ロケーションマネージャー、制作会計、プロダクションコーディネーター、プロダクションマネージャー、PDV・アニメーションではVFXスーパーバイザー、テクニカルディレクター、編集、アートディレクター、VFXエディターです。制作を回す仕事と、仕上げの技術職に需要があります。
永住は目指せますか?
189(技術独立ビザ)は使えません。これは制度上、はっきりしています。
内務省の職業リスト検索で確認したところ、映像系の職種はひとつもMLTSSLに掲載されていません。189はMLTSSL掲載が前提のため、このルートは開いていません。
使えるルートは、職種によって分かれます。Video Producer(212318)、Program Director(212315)、Technical Director(212317)、Stage Manager(212316)、Sound Technician(399516)はCSOLに掲載されており、482(Skills in Demand・Core Skills)と186(Direct Entry)が使えます。一方Director(212312)と Film and Video Editor(212314)はSTSOLのみで482・186は使えず、Director of Photography(212313)・Art Director(212311)・Media Producer(212112)はROLのみで、対象は494だけです。
つまり実務上のルートは、CSOL掲載の職種で雇用主のスポンサーを得る(482→186)か、州の指名を受ける(190・491)かになります。フリーランスが主流のこの業界で常勤の雇用主を見つけることが、最大の関門です。
技能評価機関は VETASSESS。学位だけでは通らず、職務内容と実務経験の年数が審査されます。「卒業してすぐ永住申請」という順序にはなりません。ビザの最終判断と申請代理は、登録移民代理人(MARA)の業務範囲です。
奨学金で学費を下げられますか?
大学の全学的な減額が使える可能性があります。ただし対象コースの確認が必須です。
グリフィス大学はInternational Academic Merit Scholarship(授業料20%減・申請不要)を2026年・2027年開始の留学生に提供しています。仮に適用されれば、3年で 112,500 → 90,000(差 AUD 22,500)です。
スウィンバーン工科大学は「出願すると自動的に最大20%の国際奨学金の審査対象になる(別途申請不要)」としています。4年で AUD 182,040 という金額を考えると、20%は約36,000豪ドルにあたります。
ただし、どちらも除外プログラムが定められています。研究学位や他機関との共同開講プログラムは対象外とされているほか、個別に除外されるコースが指定されています。本ページで「この課程は対象です」と断定することはしません。他分野では実際に、看板の奨学金から特定の学部が除外されている例があります。
適用が確定するのは Letter of Offer の「Total program fees」欄です。ここは私たちが学校担当者に直接確認します。知らずに出願すると、年あたり数千豪ドルの差になる項目です。
英語はIELTS 6.0で足りますか?
入学要件としては足りる学校があります。SAEが総合6.0(各項目5.5以上)、スウィンバーン工科大学が総合6.0(各項目6.0以上)、フリンダース大学が総合6.0(Speaking・Writing 6.0)です。グリフィス大学・QUT・UTS・カーティン大学は6.5、AFTRSの修士だけが7.0です。
看護や歯科(IELTS 7.0)と比べれば、明確に低い水準です。
ただし率直に申し上げると、入学要件を満たすことと、現場で使われることは別です。撮影現場では専門用語が大量に、速く、無線とざわめきのなかで飛び交います。gaffer、grip、C-stand、apple box ── 辞書では分からない語が並びます。ここで戸惑うと、次の現場に呼ばれなくなります。
渡航前の対策として現実的なのは、英語の映画・ドラマ・メイキング映像を字幕なしで大量に浴びておくことです。加えて英語の撮影解説チャンネルは、専門用語を耳から入れるのに向いています。これは点数を上げる勉強とは別に、やっておく価値があります。
2年で終わるコースと3年のコース、どちらがいいですか?
卒業後の予定によります。そして、卒業生ビザ(485)の要件が判断材料になります。
SAEは同じ学位を6学期(約2年)/8学期(約2.5年)/9学期(3年)から選べます。ボンド大学も年3学期制で2年(6学期)で修了できるほか、留学生専用の3年版を用意しています。
短縮の利点は、生活費と滞在期間が圧縮されることです。学位全体の授業料は変わりません(EFTSL総量が同じため)が、生活費は1年分浮きます。
一方で、注意点が2つあります。ひとつ、卒業生ビザ(485)は「2学年相当の就学」が前提です。短縮が要件に影響しないかは、必ず出願前に確認する必要があります。ふたつ、この分野では在学期間そのものが人脈を作る時間です。1年短いということは、現場に入る機会が1年分少ないということでもあります。
日本に帰る予定なら短縮に合理性があります。オーストラリアに残る前提なら、3年をお勧めすることが多いです。ここはご相談ください。
在学中にアルバイトはできますか?
できます。学生ビザでは授業期間中は2週間あたり48時間まで、長期休暇中は制限なく就労できます(「週20時間まで」は古い情報です)。
ただし、この分野には特有の事情があります。撮影が入る週は、朝から夜まで丸ごと持っていかれます。固定シフトの飲食店アルバイトとは、相性がよくありません。撮影スケジュールは直前まで動くこともあります。
その代わり、この分野では「現場のアルバイト」そのものがキャリアになります。ランナー、プロダクションアシスタント、機材レンタル会社での作業 ── これらは収入であると同時に、そのまま実績と人脈になります。グリフィス大学のキャリアページが「公募されない仕事が多い」と書いているとおり、この分野の就職は、現場で顔を覚えられることから始まります。
資金計画としては、アルバイト収入を当てにしすぎない設計をお勧めします。撮影の繁忙期と課題の締切が重なると、働ける時間が読めなくなります。
日本に帰ってから、この学位は役に立ちますか?
「資格として」ではなく、「作品と英語として」役に立ちます。
この分野には国家資格がないため、日本で認定される資格を持ち帰ることはできません。持ち帰るのは、卒業制作を含む作品(showreel)、技術、そして英語です。
作品は言語に依存しない部分が大きいため、日本の選考でもそのまま見せられます。むしろ「英語の現場で、外国人チームと作った」という事実が差別化になります。日本の広告・映像業界には、海外クルーとやりとりする案件や海外向けコンテンツが一定量あり、「映像の技術」と「実務レベルの英語」を両方持つ人は多くありません。
一方で、率直にお伝えしておくことがあります。職名、進行の作法、書類の形式、労働時間の考え方は、日本とオーストラリアで違う部分が少なくありません。「海外で学んだからそのまま即戦力」とはいかない場面があります。技術と作品は通用しますが、現場のやり方は現地で覚え直すものだとお考えください。
エージェントを通すと費用は高くなりますか?
いいえ。アンアルウェンのサポートはすべて無料です。学校へ直接申し込む場合と、支払う学費は変わりません。学校選び、出願書類、GS(Genuine Student)ステートメント、学生ビザ申請、住居手配、渡航後のサポートまで、追加費用なしでご利用いただけます。
この分野の場合はこれに加えて、その課程が奨学金の対象コースに入っているかの確認、留学生がポートフォリオ入学を使えるかの確認、機材と制作本数の確認、短縮コースと卒業生ビザ(485)要件の関係の整理まで含めてサポートします。
特に「奨学金の対象コースかどうか」は、知らずに出願すると年あたり数千豪ドルの差になります。そして「その制度が留学生に開かれているか」は、知らずに準備を進めると時間そのものを失います。AFTRSの学士、グリフィスのポートフォリオ入学 ── どちらも「調べれば分かるが、調べないと分からない」種類の情報です。ここは私たちが学校担当者に直接確認する部分です。
なお、学校が定める出願料は、エージェント経由・直接申込を問わず学校に支払うものです。
映像・映画制作と近い分野、あわせて検討される方が多いページをまとめました。
グラフィック、UI/UX、モーショングラフィックス。映像とデザインは、実務では地続きです。モーショングラフィックスは両分野の卒業生が就く職種で、映像より求人の絶対数が多い領域です。
VFX・CG・ゲーム開発は、技術的にはIT分野と重なります。職業リスト上の位置づけがまったく違い、永住ルートの選択肢はこちらのほうが広いのが実情です。併願を検討する価値があります。
報道・ドキュメンタリーに関心がある方はこちら。取材と構成を軸に据える点が、フィクション中心の映像制作課程とは異なります。ドキュメンタリーはどちらの課程からも入れる領域です。
いま最も本数が多く、最も安定して発注があるのは企業のコンテンツ映像とSNS向けの映像です。映像制作とマーケティングの両方が分かる人材は、実務では強い組み合わせになります。
ライブイベント制作は、グリフィス大学が映像学位の進路として公式に挙げている職種のひとつです。映像とイベントは、現場の運営という点で共通する部分があります。
AFTRSの修士が「スクリーンビジネス」であるように、この業界には経営側の職種があります。企画、資金調達、配給、権利。制作以外から業界に入る道を考える方に。
Griffith Film School を擁する大学。ブリスベンのSouth Bank文化地区にキャンパスがあります。コース構成、キャンパス、奨学金の条件をまとめています。
ポートフォリオと面接で選考する、数少ない大学。ARRI Alexa 35 と16mmフィルムを公式に挙げています。アデレードのキャンパスと出願条件をまとめています。
4年制のHonours課程と、全学士でのWIL(産業連携型学習)保証。メルボルンのHawthornキャンパス、奨学金の条件をまとめています。
卒業生が関わった作品を公式に公表している大学。ブリスベンのKelvin Groveキャンパス、出願条件、奨学金をまとめています。
まず、「卒業後どこで働くか」を決めましょう。
そこが決まれば、選ぶべき学校は絞れます。
「オーストラリアに残りたいのか、日本に帰るのか」「作品で勝負できる学校はどこか」「奨学金の対象コースに入っているか」
この分野は、学費より「その学校で何が撮れるか」が結果を左右します。だからこそ、最初に整理しておく価値があります。無料相談・無理な勧誘は一切ありません。
※サポートは毎月12名様限定です。お早めにご連絡ください。